ネット不動産フロンティアノート



−ネット不動産フロンティアノート番外編 NO.3−

    『不動産仲介業の付加価値革命』

―― 付加価値こそが、不動産仲介業の存立基盤 ――

前回のフロンティアノート番外編NO.2で、時代はニーズからウオンツへと変化していることについて述べました。

今回は、不動産仲介サービスに対するウオンツ(高度な要求)を満たすためには、何をなすべきかについての分析を試みることにします。

結論から言えば、時代の変化、お客様の変化に適応した付加価値の提供こそが、不動産仲介業者の勝ち残りの道であり、これは業種・業態を超越した大原則ではないかということです。

時代の変化とともに、お客様が住宅に期待する内容も変化し、「高度化」・「個別化」しています。これを、ニーズの深化と前向きにとらえるのか、お客様は移り気で捉えどころがないと、後ろ向きに考えるかで、対応には大きな違いが生ずるわけです。

住宅に対するお客様の期待がニーズ(安全・安心・立地・環境などの基本性能)に加えて、ウオンツ(個人的な価値観・感性・満足感にフィットする付加価値)も満たすものと深化・変化していることを、しっかりと理解することが出発点です。

このことに気づいていない仲介業者は、それだけでサービス業失格と言わざるを得ません。しかし、気づいていない仲介業者が少なくないこともまた事実です。

ビジネスの基本は、相手に対する理解・買い手に対する理解を深めることにあるとされています。言い換えれば、コミュニケ―ション能力をいかに高めるかが問われているわけです。

仲介業も含めて、不動産業の本質は、アメニティ価値の創造・向上にあるわけです。アメニティとは、住み心地の良さ、快適な居住環境といった意味ですから、提供する側からすれば、付加価値、お客様の側から見れば、満足感ということでしょうか。

インターネットが普及し、お客様がネット上で物件情報をリアルタイムで自由に取得できるようになる以前の時代、仮に、旧き良き時代とでも名づけましょうか。

この時代、不動産仲介業者は、物件情報を店頭に貼りだし、ときどき折込チラシを配布すれば、世の中やお客様から仲介業としての「存在価値」が認められていました。

別に、難しい「付加価値」云々など考えなくても、「存在価値」、即ち、世の中が求めている最低限の「価値提供」さえ実行すれば、経営が成り立った、文字通りの旧き良き時代だったといえます。

ネット時代の今でも、旧き良き時代の体験・経験が忘れられず、「存在価値」すら失ってしまい、世の中から消えていく仲介業者も少なくありません。

ここで一つ蛇足をつけ加えると、付加価値には、お客様にとっての付加価値と、会社・業者にとっての付加価値とがあります。

物件情報の囲い込み、お客様の囲い込みによる両手数料稼ぎなどは、物件情報の「希少価値」化により、会社にとっては2倍の「付加価値」をもたらすかもしれませんが、お客様や世の中にとっては、「マイナス価値」をもたらす悪しき慣行であることは云うまでもないことです。

不動産仲介業者にも「付加価値革命」が押し寄せてきているらしいということは分かっても、では、どう対応すれば良いのかまでは、なかなか理解できないのが現実です。

付加価値の源泉は「知識」であると断言できます。ただし、単なる「知識」ではなく、経験・体験に裏打ちされた、「知恵・ノウハウ・実践知」という意味での知識です。

この「実践知」を戦略レベル、戦術レベルまで具体化し、高速かつテンポよく創造・展開することが、不動産仲介業界に限らず、ビジネス全般に求められているのが、この時代の特徴といえます。

以下に、時代が不動産業・仲介業に求めているものを(イ)物件の付加価値、(ロ)仲介サービスの付加価値に分けて分析を試みます。

(イ) 物件の付加価値

そもそも、物件(住宅)の価値とは何でしょうか。それは、資産としての価値(交換価値)と利用することで得られる効用(使用価値)に分けられることは、経済学が教えるイロハです。

戦後、長く続いた「土地神話」の時代には、建物の価値(交換価値)が30年程でゼロになっても、土地価格の上昇が建物の目減り分を十分にカバーしてくれたので、大きな問題とはならずに済みました。

ところが、わが国が成熟社会・人口減少時代に入った21世紀、地価上昇は期待できない時代となったわけです。そこで、建物価値の維持と正当な評価が個人的にも社会的にも大きな問題として浮上してきました。しかも。高額商品・長期使用商品の代表格である住宅が、個人資産の大部を占めているという現実を反映して、いかにすれば住宅の価値を維持し、高める(付加価値をつける)ことができるかが、近年、にわかにクローズアップされてきたわけです。

加えて、中古住宅の流通が大きく増加しています。建物検査書付・瑕疵担保保険付・土地地盤調査書付・鑑定評価書付……中古住宅の流通を促進する新しい試みや制度が、次々と生まれつつあります。

今は、全国に800万戸の空き家がある時代なのです。これら総てが、即、売買物件・賃貸物件ではありませんが、「予備軍」であることはたしかです。

いかにすれば、これらの物件予備軍を市場に誘導し、売り手も買い手も満足できるシステムを構築することができるかが、業界としても、個別業者にとっても、今後の最大の課題であることに違いはありません。

誤解を怖れずに言えば、市場に出てきた中古物件をお客様に紹介し、仲介手数料をいただくだけのビジネスモデルでは、前途は厳しいのではないでしょうか。

お客様の側からすれば、戸建てにしろ、マンションにしろ、中古物件を購入するに際しては大きな不安を抱えています。この不安を解消するために「安全・安心という付加価値」を提供するのも不動産仲介業の付加価値の一つですが、この面は(ロ)仲介サービスの付加価値の項で論ずることにします。

ところで、物件の付加価値、物件に付加価値をつけるといえば、すぐに思い浮かぶのが、リフォーム・リノベーション・コンバージョンという言葉です。

リフォームの具体的内容としては、改築・改装・増築・減築・修繕・耐震補強・断熱改修・設備刷新等がありますが、これらの工事が大規模・全面的な改修となり、新築時以上の価値を建物に持たせるケースをリノベーションと表現するのが一般的です。

さらに、オフィスビルを住居ビルに改築するなどの用途の変更を伴うものをコンバージョンと呼んで、リノベーションと区別しています。

1996年の年間売上9兆円をピークに、リフォーム業界は下落傾向が続いていましたが、2009年から持ち直し、2013年は6兆3,000億円まで回復しました。

業界に対する国民の不信感が強く、リフォーム業者側にも、その場限りの「押しつけ営業」と「不良・過剰施工」が多いことなどが問題として指摘されてきました。しかし、家電量販店やホームセンターなどの異業種からの参入も増加し、2020年には7.6兆円の売上予測がなされています。

住宅リフォーム業と不動産仲介業は、お客様が共通していることに加えて、業界体質や利点・欠点も似ており、両業界からの相互浸透も多くみられるなど、お互いに相性の良いビジネスモデルでもあります。

しかし、不動産仲介業者の立場から、物件に付加価値をつけるという切り口で、リフォームのあり方を考えた場合、単なる改築・改装・修繕レベルでなく、物件に「新たな価値」を付加するという、お客様の立場・住宅観を十分に反映した助言力・提案力が求められるのではないでしょうか。

いずれにせよ、国としても中古住宅市場の拡大に力を入れており、「成熟期」に入り、空家数が800万戸というわが国の住宅市場を追い風として、仲介業界とリフォーム業界にはこれから10年程は、大きなマーケットが待っているといえそうです。

特にこれからの10年〜20年に備えるという意味でも、住宅市場のプロとしての不動産仲介業者は、投資物件・収益物件を含む、物件のリノベーション・コンバージョンについての知識と経験を蓄積して、お客様への提案力・コンサル力が求められてくると断言できます。

(ロ)不動産仲介業・サービス業としての付加価値

次に不動産仲介業・サービス業としての付加価値について考えてみます。

サービス業全般にいえることですが、付加価値向上策は、対競合他社・自社サービスの水準・顧客の期待と比較して、サービスの品質を高めることであり、「感動サービス」のレベルにまで到達することが目標です。

しかも、サービス業の生産性向上策も、究極的には付加価値の向上策以外にはありえないとされています。

しかし、付加価値は顧客毎に違ったものであることが多く、標準化は難しいとされていますが、「客を待たせない」ことや「サービスレベルのバラつきの軽減」、「お客様の気持ち、立場に立って応接する」などの「あたりまえ」のことがスタートラインであることに変わりはありません。

それでは、サービス業としての不動産仲介業の付加価値とは何でしょうか?

まず最初に指摘できることは、今までの仲介業は、付加価値とは全く無縁な世界でも生きてこれたということです。

シンプルに、物件の売買・賃貸情報を提供し、契約の仲介をするだけのビジネスモデルがこの業界では主流であったし、大手を振って「通用」していたわけです。

このような業界体質・業界事情にあるということは、新しい分野である「付加価値仲介」のビジネスモデルに転換すれば、ビッグチャンスに出会える幸運が待っている業界だともいえるわけです。

不動産仲介業の前途には、二つの道があります。

一つは、仲介手数料「半額・無料化」の価格競争の道です。この道は、一見、楽にみえますが、先に希望を見出せない泥沼に通じる道だといっては言い過ぎでしょうか。

第二の道は、「付加価値」によって仲介手数料をいただく道、お客様に「満足感を提供する」ことで、胸を張って手数料をいただくビジネススタイルです。

(1)お客様が業者・業界に対して持つ「不信感」を払拭できるだけの人間力の提示。
(2)価格以上の「価値」のある「高付加価値物件」の紹介。
(3)地域情報・エリア情報の詳しい提供。
(4)お客様の生活設計・将来設計・住宅観を十分に理解した上での物件の提案。
(5)お客様の悩みや迷いに十分に対応できるコミュニケーション力とアドバイス力。
(6)お客様の将来にわたる「返済力」を前提にしたローン借入へのアドバイス力。
(7)物件についての不安を一つひとつ具体的に解明・解消できる住宅についての検査能力。
(8)収益物件の所有者や不動産投資家に対するリスク(不安)とリターンの解析力とコンサル力。
(9)時代の変化と不動産市場の変化を見すえた情報と「物件」の提供。
(10)お客様に対しても、業界に対しても、「フェアー」に対応し、決して信頼関係を裏切らないという営業スタイル・経営姿勢の堅持。

付加価値の具体的あり方を列記しただけですが、以上の10項目程度はすぐにあげることができます。

これらの事項は、いずれも、新しい時代・ネット時代にあっては「あたりまえのこと実行する」程度のことですが、このことそのものが、お客様に対する「付加価値」提供になるというのが、残念ながら、業界の現状ではないでしょうか。

調査不足、知識不足、説明力不足という不動産仲介業界の現状を打破し、サービス業として「あたりまえのことをする」ことが、結果として、付加価値提供になるということです。

言うまでもないことですが、今は、インターネットの時代です。来店客の90%超がホームページを見ての反響客となっているのが現実です。

だとするならば、自分の会社のホームページをじっくりと見てもらえれば、(1)〜(10)までの付加価値を提供できる仲介業者であることをお客様に理解してもらえるようなホームページ創りが最大のポイントになるわけです。

不動産仲介業界の当面する最大の課題は、国民の目には、お客様の目には、不透明な世界・業界と見えることではないでしょうか。

だとするならば、不透明感を除去すること、つまり、物件の「見える化」に加えて、業界の「見える化」をはかることが解決策となることは理の当然であり、「あたりまえ」のことです。

物件情報だけでなく、経営者やスタッフの姿勢、思い、目標…の「見える化」をホームページ上で実現することこそ、ネット時代の「付加価値革命」だということが結論として言えることです。(おわり)


ネット不動産フロンティアノートは今回で最終回といたします。5年間にわたり、56回の連載におつき合いいただきありがとうございました。

これからは、鑑定部のホームページで連載している「原発賠償を考えぬく」の執筆に全力を注ぐつもりでおります。

なお、ネット不動産フロンティアノートをベースにして「地方都市でのネット不動産成功術」――キーポイントは「メール営業」――「にじゅういち出版」より6月中旬に出版されます。

ぜひ、そちらも購入して、お読みいただければ幸甚です。



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