ネット不動産フロンティアノート



インバウンドマーケティングとの出会い

−ネット不動産フロンティアノート番外編 NO.1−

『ネットマーケティングの第2幕は始まっていた』

ネット不動産フロンティアノートを書き始めたのが2010年の暮れですから丁度2年が過ぎました。53回にわたる連載で書くべきことはほぼ書きつくしたつもりでした。

資料収集、取材を始めてからは約3年になるわけですが、読み返してみると、ネット不動産=ホームページとメールを主体とした不動産仲介業の業態=の市場分析とマーケティングが主なテーマであったことが改めて理解できます。

不動産マーケットの特徴の分析から始まり、インターネットの普及が、仲介業者の集客手法を、チラシ広告からホームページによる情報発信・集客に変化させている不動産仲介業界の現状を、時代の変化とともに記述してきたつもりです。

そして、市場も、売り手市場・貸し手市場から、買い手市場・借り手市場に根本から変わったこと、加えてインターネットの普及が「顧客中心の市場」に市場構造を根本から変えつつあることも見てきました。

市場の変化は当然の帰結として、新しいマーケティング手法を生み出すことになります。ネットマーケティング・ホームページマーケティング・メールマーケティング、それぞれの場面で、さまざまな工夫がなされ、試行錯誤の中から方向性が見えてきつつあります。

時代とともに、不動産仲介業の営業スタイル、経営姿勢も大きく変わりつつあります。押しつけ営業、追い廻し営業、プッシュ型営業が世の中から受け入れられなくなってしまったのです。

その対応策として、フロンティアノートでは、第9章の(3)からホームページの3分類の中で、インターネット時代の不動産仲介業のマーケティング・ホームページマーケティングは以下の5点に集約することができると明記していました。

(1)会社の経営理念・経営姿勢を高く掲げ、お客さまの共感・共鳴を得る。

つまり、会社の特長や強みを前面に押し出し、それをブログやコラムで、ソーシャルメディア(SNS)も活用して、分かりやすく、具体的な言葉で表現し、継続して発信すること。

(2)すべての情報を開示する姿勢をホームページ上で貫き、実行する。

情報の囲い込み、マイナス情報の不開示など、不透明感の漂う業界イメージを逆手にとって、実際の行動で業界の透明化を目ざすことを強く発信すること。

(3)物件情報の質・量・鮮度での差別化に加えて、資金計画作成や物件調査の精緻化などでの差別化を実現する。

ファイナンシャルプランナーとしての能力を備え、お客さまの住宅資金計画・返済計画などへの専門的アドバイス能力を具備し、ホームページ上で発信すること。

加えて、中古住宅性能検査(ホームインスペクション)の専門技能を有するスタッフを養成し、これからの中古住宅流通の量的拡大の時代に備えること。

(4)不動産仲介業の特性を理解した、個有のSEO(検索エンジン対策)を実施する。

お客さまの変化、仲介業界の変化、検索エンジンの変化に対応した、日々の実践・ノウハウから生まれるSEOを実施すること。

社内にSEOを実施できるスタッフを養成すると同時に、iPadやiPhoneなどのモバイルの変化にも対応できる能力を向上すること。

(5)ネットマーケティング・ホームページマーケティングは、未だ揺籃期にあることを認識し、試行錯誤を恐れずに大胆に実行する。

自社のホームページに日常的に改良を加え、修正・追加・削除の経験からノウハウを生み出すこと。つまり、経営学の教科書が説く基本サイクル、 Plan→Do→Check→Action、PDCAを日常的に実施することです。

不動産仲介業のマーケティング・ホームページマーケティングのあり方を手探りで探し求めていた時「アドボカシーマーケティング」と出会いました。

アドボカシー(お客さま支援)マーケティングの要点は、「顧客主導の時代に、信頼される企業を目指すには、公正・公平なあらゆる情報を開示し、中立的なアドバイスに徹するべきである。顧客を徹底的に支援(adovocate)することによって、顧客の長期的な信頼を得ることができる。」というものです。

アドボカシーマーケティングの要点は、「お客さまの購買行動において、お客さまが最善の決断を下せるよう力を貸すこと」にあります。

私がフロンティアノートを書き進めるなかで、おぼろげに見えてきた不動産仲介業におけるマーケティングのあり方を、具体的・理論的にまとめた経営戦略論が「アドボカシーマーケティング」の中にあったわけです。

アドボカシーマーケティングの唯一の弱点は、軌道に乗せ、採算が合うまでに時間がかかり、考え方の大転換と大いなる努力が必要なことです。

しかし、どんな業種でも、マーケティングの基本、営業の基本はお客様との信頼関係をいかにして築くかにあるわけです。そのために相当な時間と努力が必要なことはあたりまえのことではないでしょうか。

不動産仲介業の場合、お客様は期待と不安を併せ持ちながら物件探し、業者選びをしているわけです。

このお客様の期待に応え、不安を解消する努力を続けることで、お客様との信頼関係は築けるものだと信じつつ仕事を続けてきました。

そんなある日、10月の中旬だったでしょうか。FDJ社が発行する月刊誌「不動産業戦略e−REVIEW」の2012年11月号が手許に届きました。

「インバウンドマーケティング」という従来の「アウトバウンドマーケティング」的な考え方を根本から変えるマーケティング論が紹介されていました。

新聞・テレビ・ラジオ等のマスメディアを使った広告やチラシ・DM・展示会による集客手法をアウトバウンドマーケティングと位置づけ、多額の費用をかけて消費者の認知を得ようとするこのマーケティング手法の時代は終わりつつあると断じていました。

アウトバウンドつまり、お客様に商品やサービスの情報を「届ける」のではなく、お客様から商品やサービスの情報を「見つけてもらう(インバウンド)」ことこそが、インターネット時代のマーケティング手法だと強調されていたわけです。

早速「インバウンドマーケティング」というキーワードで検索をかけたところ、コンテンツマーケティングの一環として、オンライン(ネット)マーケティングの世界で「めばえ」、今や「主流?」になりつつあるマーケティング論であることが分かりました。

2009年にハリガン・ブライアン両氏による「インバウンド・マーケティング」が出版され、2010年には日本語版も出版されていたことも分かりました。

早速、Amazonで購入し、翌日には読み終えました。

『インバウンドマーケティングとは』

以下に、私なりに理解した「インバウンドマーケティング論」を紹介します。

まずは、インターネットは時代を「消費者主権」「消費者主導」に根本から変えつつあることを明確に認識することが前提です。つまり、以下の点をはっきりと理解することでインバウンドマーケティング論の入り口、スタートラインに立つことができるわけです。

○消費者が商品やサービスについて調べ・探そうとした場合、検索エンジンを利用するのが日常化したこと。さらに、商品やサービスについての感想をソーシャルメディア(SNS)へ発信し、SNSによる消費者同士のコミュニケーションが激増しつつあること。

○時代は情報のオープン化を求めている。情報の囲い込み、抱え込み路線に未来はないこと。

○情報のオープン化で消費者に情報が集まり、消費者「主権」・「主導」が可能となったこと。

○インターネット時代に、消費者・個客がパワーを持つことを阻止することは無駄な努力であり、時代の流れに逆らわず、消費者・個客パワーを推し進める側に立つこと。

○消費者・個客の意識・日常生活が「売り込みを受ける」文化から、「ネットを使って自分で見つけ出す」文化へと変化していること。

このような時代の変化を背景にして、インバウンドマーケティングは誕生しました。

インバウンドマーケティング論をより深く理解するために、その正反対に位置する従来型・プッシュ型のアウトバウンドマーケティングについて、おさらいをしておきます。

駅前広場や街頭での広告ティッシュやチラシ配布をはじめとして、最近は姿を消したセールスマンによる戸別訪問、企業側からの電話勧誘、折り込みチラシ広告、新聞・雑誌・テレビ・ラジオによる企業広告・商品広告は(押しつけ型)アウトバウンドマーケティングの典型です。

これらの広告手法は、企業側の論理・ニーズに基づく「販売促進」の手法として行われるものであり。消費者・個客満足を目的としたマーケティングとは原点も方向性も違うものです。

しかも、アウトバウンドの手法は、いずれも多額の費用を必要とする手法で、時代の変化とともに、費用対策効果の面でも競争力・有効性を失いつつあるものです。

インバウンドマーケティング(コンテンツマーケティング)の要点は、「有益な情報を無料で提供することで、見込客(リード)との関係を築き上げ、最終的に商品・サービスの販売・契約へとつなげる」ことにあります。

あくまでも、押しつけるのでなく、惹きつけることに最大の特徴があるわけです。

では、どうすれば消費者・個客を惹きつけることができるのでしょうか。

そのために必要なことは、長期的に上質のコンテンツを提供し続けること以外に方法はありません。上質なコンテンツは自社HPのアクセス客を見込客に変え、TwitterやFacebookを通して多くの見込客を獲得する道を拓いてくれるだけでなく、接点のできた見込客との信頼関係を築く上で大きな力を発揮します。

では、上質なコンテンツのための必要条件、十分条件とは何でしょうか。

一つは、基礎コンテンツといわれる、専門分野・専門ビジネスについてのブログです。不動産仲介業のケースではベースとして、質・量・鮮度を備えた物件情報の発信・更新があることはいうまでもありません。

二つ目は、パーソナルコンテンツです。書き手の個人的な体験等を発信し、読者と共有することで、より深い信頼関係を築くことが可能になるからです。

インバウンドマーケティングは、インターネットの時代が生み出したマーケティング手法です。その事情を反映して、その手法・手順として以下の3点が求められます。

(1)情報洪水・情報爆発の中で、自社サイトを見つけてもらうためのステップ、つまり、SEOによるアクセス客の獲得がインバウンドマーケティングの第一歩です。

(2)アクセス客の期待を獲得するステップ、つまり、コンテンツの質と量で競合サイトの差別化をはかり、このサイトはくり返し訪問するに値するという評価を得ることが第二歩です。

(3)第三のステップとして、くり返し訪問してくれるアクセス客から信頼を獲得するという、インバウンドマーケティングの最も重要な段階があります。

ブログを通しての専門分野・専門知識の発信は、読者の「関心・納得・信頼」を得る上で大いに役立つことになります。

加えて、パーソナルコンテンツの発信は、書き手と読者の「体験共有」効果をもたらし、信頼関係の基礎を作っていく効果が期待できます。

不動産仲介業におけるメール営業という手法も、この段階でのマーケティング手法と位置づけることができます。

個別物件についての問い合わせや、周辺環境・契約条件等についてのメールでの問い合わせに対して、誠実にメールでお答えすることは、お客様との信頼関係の醸成・育成の出発点といえるわけです。

インバウンドマーケティングは、日本的な「おもてなし」の接客対応と共通点が多いことに気付きます。

いかにお客様の思い・心・マインドに寄り添って応対するか、お客様の心を動かす「共感・納得」の行動・対応はどうあるべきかという点で共通しているからでしょうか。

『インバウンドマーケティングは不動産仲介業の進路を示す』

平均的日本人が一生のうちで住宅を売ったり買ったりする「売買経験」は1.8回、賃貸の場合でも2.3回程度です。

これを消費者個人の側からみれば、売買と賃貸を合わせても、「住宅」について具体に関心を持ち、何らかの行動を起こす頻度は10年単位のスパンで起きる行動だということになります。

しかも、住宅は高額商品であり、ローンは長期です。日常生活におよぼす影響も長期かつ最大なものです。消費者個人の住宅についての潜在的な関心は高いし、潜在的な関心を持った広大な層が存在することもまちがいなく事実です。

しかし、この潜在的な関心・欲求が、いつ顕在化し具体化するかは消費者側の個々の事情に左右されるため、仲介業者側・情報発信側からは予測不可能です。つまり住宅購入の個別、具体的な動機と欲求のトリガー(引き金)は消費者側にあるわけです。

このような、ある意味では特殊事情を抱えた不動産仲介業界にあって、インバウンドマーケティングは中・長期かつ戦略的な意味で最適なマーケティング手法といえるのではないでしょうか。

ブログとソーシャルメディア対応策は、住宅購入の潜在層に対する広範かつ長期にわたる働きかけの手法として有効であるだけでなく、顕在客、今すぐ客の仲介業者選びの際にも大きな力となることはまちがいありません。

ブログはインバウンドマーケティングの核心部分を荷うものだと理解されています。その理由としては、ブログがソーシャルメディアの普及で、一層広範囲に広がる環境ができあがったことに加えて、中・長期的にみれば費用対効果の効率性が高いことがあげられます。

インバウンドマーケティングにおいては、ブログは資産であり、ブログのために使う労力・費用は「投資」であるとも理解できます。

第一の理由は、中立的(商売丸出しでなく)で熟慮されたコンテンツであれば、お客様だけでなく同業者も含めて業界全体を引き込むことのできる「情報発信システム」となり得ることです。

第二の理由は、見込客がブログを見ることにより、書き手が不透明感の強い業界内にあって、お客様に寄り添う専門知識を有する業者であると認識することが期待できるし、最良の取引相手、仲介を依頼するに値するとの信頼を獲得できる広範かつ強力な「信頼獲得・集客装置」となり得ることです。

さらに、ブログは書けば書くほど「資産化」し、末永く見込客を誘導してくれる「無形資産・耐久資産」となることです。

しかし、インバウンドマーケティングには課題もハードルもあります。

最大の弱点は、短期的な効果は期待しにくく(ブログで物件や自社宣伝を前面に出せば、それだけでお客様は二度と見てくれなくなります)、中・長期のマーケティング戦略だということです。

しかも、アウトバウンドマーケティングに長年慣れ親しんできた仲介業者が正反対のインバウンド・・・・・・などと言われても、頭の切り替えは、文字通り「大変」なことです。

最大のハードルは、いかにして「良質なコンテンツ」を作り続け、提供し続けるかということです。

不動産仲介業に限っていえば、コンテンツは物件情報そのものであり、物件情報の質・量・鮮度で最高のコンテンツを提供できれば、それでよしとする考え方も有力です。

しかし、物件情報の質・量・鮮度での競争だけでは「差別化」は一層難しくなりつつあります。なぜかといえば、お客様が不動産仲介業者のホームページ上で探しているのは、物件情報だけではないからです。

住宅という、一生一度の高額商品を購入するに際して、お客様は信頼に値する仲介業者を本気で探し、かつ、選ぼうとしているのです。

では、不動産仲介業者がホームページ上で「上質なコンテンツ」を提供するにはどうすれば良いのでしょうか。

必要かつ最低限のレベルで求められることは、物件情報の質と量、それに情報の鮮度です。

さらには、ブログによる専門知識や業界事情の発信、お客様インタビューや経営者インタビューによる、企業理念や企業姿勢の発信もこれからの時代は強く求められています。

ブログによる発信を続けることは、実は、大変な労力と資質・能力が要求されます。しかし、わが国の不動産仲介業界にもブログによる情報発信を続けている経営者・スタッフが全国各地で出現しつつあります。

不動産仲介業は専門知識をベースにしたサービス業であると同時に、物件情報発信の質と量が問われる情報産業でもあります。

しかも、わが国個有の歴史的背景・業界事情を反映して、お客様からの「信頼獲得」がビジネスの出発点になるという、特別な業界事情もあるわけです。

お客様の「信頼獲得」のためには、ホームページ上に「お客様の声」を掲載するのが有効であることは広く知られています。

たしかに有効ではあるわけですが、マンネリ化したり、型式化したり、苦しまぎれに「作文」したりしているケースも少なくないようです。

「社長あいさつ」やスタッフ紹介も型にはまったものが多く、読む側の心に届く、心に響く文章はめったに見られません。

そんななかで、社外の専門スタッフが、売り主あるいは買い主となったお客様を直接訪ね、詳細な取材を重ねて「お客様インタビュー」を掲載するホームページも現れはじめました。

「社長あいさつ」の代わりに、社外専門スタッフによる長時間の取材をまとめて、代表者の人柄・経歴・起業の動機・企業理念・業界の改善点・目ざすべき方向などを読む人を惹きつける文章でまとめる「代行サービス」も出現しています。

アウトバウンド(押しつける)のではなく、インバウンド(惹きつける) のマーケティングが、これから、わが国の不動産仲介業の本流になると予想されるなかで、時代が求めている新しいサービスではないかと思われます。

この10年来、ホームページを作成する会社は乱立しており、ホームページも「粗利乱造」の感さえあります。

しかし、今、時代が求めているのは、ホームページそのものを作成する・保有する段階を超えて、ホームページのコンテンツ(内容のある情報発信)であることはたしかです。

これからのホームページ関連ビジネスは、ホームページの作成支援の段階を終えて、コンテンツの作成・充実をサポートするビジネスに変化していく方向にあることは間違いないでしょう。

インバウンドマーケティングは、そんな時代の到来を予告しているのではないでしょうか。



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