ネット不動産フロンティアノート



【第9章】ホームページの運営

9-(4) ネット集客 −−− ウォルマートから学ぶ

不動産仲介業のホームページの最初にして最大の役割は、売買でも賃貸でも、集客、つまりお客さまにネット店舗の中に足を踏み入れてもらうことです。

だとするならば、インターネットでの情報収集に慣れ親しみ、ネット上での商品購入の経験を積んできたお客さまが、賃貸物件や売買物件を探す場合、どんなことがらを重視し、どんな行動をするのかについて、ホームページの開設者・運営者は、常に学習・研究を怠るわけにはいきません。

ユーザーの視点に立ち、お客さまが仲介業者のホームページに求めているものが何であるかを考え続け、創意工夫に基づく「実践」のみが競争力のある、集客力のあるホームページ運営を可能にするからです。

仲介業者のホームページがまだ珍しかった10年前は別として、チラシや情報誌の役目が終わり、大部分のユーザーがインターネットを利用して物件探しをするのが常態化・日常化した今日、同業他社とのホームページ上での競争に打ち勝ち、ネット時代の集客競争で優位に立つことは容易なことではなくなりました。

かつては、正確な物件情報のタイムリーな提供と実店舗での正直・誠実な対応さえしっかり実行できれば、大手企業にも負けない集客力を、地場の中小業者も持てると期待され、実現できた時期もたしかにありました。

この考え方は、今でも基本的には正しい考え方であり、正しいネット戦略であることに変わりはありません。しかし、ネット時代のお客さまは、物件情報だけでは問い合わせをしなくなったのです。チラシや情報誌を見て問い合わせをするお客さまの率(業界用語でいう「反響率」)が、年々低下しているのと同じ理由です。

第一の理由は、お客さま目線で構成されているホームページが意外と少ないことです。ネット利用に慣れたお客さまは、ホームページ上で気になる物件を見つけた場合どんな行動をとると考えますか?。 まず、電話やメールで問い合わせをしたり、来店すると考えているのであれば、半分正解、半分誤解です。

お客さまは「気になる」物件に出会った場合、所在する地域のこと、周辺環境、物件の設備・外観・間取り・仲介業者の姿勢、営業マンの人柄までネット上で調べ、現地に出向いて調べ、「気に入る」レベルまで達してから、問い合わせをするケースが多くなっているのです。

つまり、ネット利用に慣れ親しんだお客さまを納得させ、親近感を抱いてもらうためには、ホームページ上で「現地案内」や「社内案内」が可能となるまでの情報公開とオープン化が求められているのです。

物件情報の一部分を意図的に隠し、問い合わせや来店を誘うという旧い手法は、お客さまに見透かされ、通用しなくなってしまったのです。

第二の理由としては、お客さまの変化・進化をあげることができます。電話やメール、FAXで問い合わせをしたり、実店舗を訪れて詳しい物件情報を入手しようとすると、その後に、電話・FAX・メールによるしつこい営業攻勢をかけられるのではないかという「恐怖心」を持つお客さまは少なくありません。ネットを利用することでこの「恐怖」から逃れることが可能になったのです。

仲介業者が、目の前に現れたお客さまに、早く決めさせようと必死で対応したのは、それほど昔のことではありません。多額のチラシ広告費を払って、やっと目の前にお客さまが現れたわけですから、ある意味では、やむを得ない行動だったのかもしれません。

ネットを利用することで、仲介業者の実店舗を訪ねなくとも、詳しい物件情報を入手できるようになったことが、お客さまの最大の変化です。さらに、物件情報収集のために、多くの仲介業者のホームページを訪ねた結果として、仲介業者の特徴や得意分野、会社の経営姿勢についても十分な情報入手が可能になったのです。

つまり、仲介業者にとっては、情報というものは「提供」すれば良いという時代は終わってしまい、お客さまに「選択」されて初めて情報が生きてくる時代になったというわけです。お客さまの立場からすれば、物件情報も会社情報も数多く収集し、比較検討して、「選択」できる時代になったということです。

2010年7月に(株)リクルートの住宅総研が行った「不動産仲介会社への期待と満足度調査」によると、インターネット時代の消費者行動の最大の変化は、ネット媒体を使って自分で「探す」「調べる」行動が先行し、不動産会社に接触するのは選択した情報を「確かめる」ためになったということです。

ネット上で「探す」「調べる」対象は、購入可能額の把握から始まり、物件や不動産会社の選び方、ローンの種類や特徴・諸費用、取引の習慣や手順と多岐にわたっています。「探す」「調べる」という検索行動の結果、選ばれた会社と物件だけが「確かめる」という行動の対象になるわけです。

「確かめる」という行動は通常は、ネット店舗ではなく、リアル店舗で行われいるわけですが、「確かめる」対象である現地調査、周辺環境調査、価格の妥当性調査、などはネット上・ホームページ上でもかなりの部分ができるようになったのです。

ネットで、ホームページ上で対応できる部分は全面的に公開することで、お客さまへの信頼も増すし、実店舗の効率化もはかれるという考え方は、理想論にすぎないでしょうか。

集客方法・手段も変わりました。かつては、駅前などの人通りの多い場所に店舗を構え、毎月折り込みチラシを全戸配布し、管理物件や管理をまかされた駐車場に看板を立てることでお客さまが来てくれる時代もありました。今でも、賃貸仲介業の場合、駅前の「一等地効果」は持続しています。

しかし、ネット時代の「集客」は根本から変わったのです。賃貸にしろ、売買にしろ、お客さまが不動産情報を収集する場合、インターネットの利用率が90%程度になったのです。ネットを利用できない10%のお客さまを主要なターゲットにして、チラシや物件情報誌の編集やアピール力向上に力を入れることが正しい経営戦略といえるのでしょうか。チラシ集客戦略に未来はあるのでしょうか。

たしかに、ネット店舗・ホームページ中心の店舗に切り替えるのも容易なことではありません。ホームページを作り、多くの物件情報を載せただけではお客さまから相手にされない時代になったのです。

ここで改めてネット店舗=ホームページの競争力・集客力について考えてみます。

不動産仲介業の「集客セミナー」は、あいかわらず盛んなようです。さすがに、チラシ広告による「集客セミナー」は少なくなっていますが、ホームページ活用の集客セミナーはまだ「集客力」があるようです。

集客セミナーで取り上げられるテーマはほぼ決まっています。
(1)ネット活用のメリット
(2)ネット集客のポイントとノウハウ
(3)アクセスアップ策
(4)ネット広告の費用と効果
(5)ポータルサイト集客のメリットと限界
(6)モバイル活用の手法と効果
(7)問い合わせ・会員登録を増やすノウハウ
(8)効果のあるSEO対策と手法
(9)成約率向上策
(10)メール営業ノウハウ

以上の10項目の課題について、セミナーを10回受講したとしても、集客力・ホームページの競争力が向上することはあまり期待できません。

肝心なことは、自社のホームページ上で、日々の実践を通して確かめ、自分の頭で考えぬき、工夫をこらすことです。他人の知恵やノウハウを取り入れる程度で同業他社との競争に勝てるほどこの業界は甘くないというのが実感です。

とはいえ、有料・無料は問わず、ネット不動産のセミナーには10数回出席しています。得ることも少なくありませんでしたが、何か物足りなさを感じることが多かったのも事実です。

セミナーの講師が、自らは不動産仲介業に携わっていないケースが多いことに加えて、自社のソフトウェアの売り込みが目的であったりしたせいでしょうか。

体験的にいえることは、ホームページやブログで、よくここまでオープンにできるものだと感心するようなブログを書き、発信している講師のセミナーは、得るものが多かったということです。

自分も、良きお手本となる諸先輩に見習って、全面公開を基本としてこのフロンティアノートを綴ってきたつもりです。おかげさまで、今回で44回目です。

各種セミナーで取り上げられている(1)〜(10)のテーマについても、かなり細部にわたり記述してきたつもりです。テーマ(10)メール営業については章を改めて書く予定になっています。

ここでは、世界の小売業界の断トツの巨人、ウォルマートの経営理念との比較でネット店舗の競争力・集客力について論じ、スーパーマーケットの発展の出発点となったセルフサービス方式とネット店舗の類似点、共通点について分析を試みます。

ウォルマート・ストアの経営理念は以下の5点に要約できます。
(1)(他店より)より低価格で売る。
(2)顧客満足の完全保証。
(3)一品大量の販売で仕入先を引きつける。
(4)質より安さを優先させる。
(5)同じ顧客が毎週来なければ売上は維持できない。

これをネット店舗の競争力という視点から分析し、学べる点は何かを考えてみます。

(1)についてはネット店舗の商品は物件情報の提供、資金計画のアドバイス、取引慣行や手順の解説といった、いずれも無料商品ばかりです。ならば、無料商品の「価格競争」とは、何をどうすれば良いのでしょうか。

首都圏や大都市圏では仲介手数料半額や「無料」化の動きが一部に見られます。これは住宅取得価格が「異常に高い」現実と、仲介手数料が旧態依然とした従価制であることの矛盾をついた商法であり、キワモノ商法、場当たり商法に近いと見ることができます。

なぜかといえば、仲介手数料の値引き競争はリアル店舗レベルの競争であり、バーチャル店舗としてのホームページの競争ではないからです。バーチャル店舗・ホームページの競争力の不足をカバーするためにリアル店舗での仲介手数料の値引きを「利用」することは、結果としてバーチャル店舗・ホームページの真の意味での競争力を失う結果になるからです。

いい機会ですので、ここで、情報という無料商品の「価格競争力」について考察してみます。

この問題を解くカギは、価格コストではなく時間コストという「モノサシ」で、「価格競争」レベルを超えた「価値競争」を分析することこそが、ネット店舗・バーチャル店舗の真の競争力を理解することになるという考え方です。

お客さまは仲介業者がホームページ上で提供している物件情報を含む各種の有用情報を無償で入手できます。しかし、実は、そのためには時間という高価なコストを支払っているのです。

支払った時間コストに比べて、どれだけ役に立つ情報が入手できたか否か、収集した情報の質・量・鮮度の面でどれだけ満足できたかで「価値競争」の勝敗が決まるという考え方です。

これを数式化すれば、「入手した情報の質と量÷アクセス客の費やした時間コスト=顧客満足・価値競争力」と規定できます。

(2)の顧客満足の完全保証について、仲介業者が学ぶべきことは何でしょうか。

論ずるまでもないことですが、不動産仲介業の存立基盤・存在意義は、安心・安全取引のサポートとお客さまの立場に徹した仲介サービスの提供です。万が一にも、お客さまが提供されたサービスに満足されない場合は、仲介手数料を全額返金するという保証システムを堂々と宣言し、実行することは、かなり勇気のいることですが、当社は2年前から実行しています。

当初は、スタッフ全員が当惑し、消極的でしたが、実施に踏み切りました。スタッフが緊張感を持って仕事をすることはもちろんのこと、お客さまからも「真剣勝負」で仕事をする会社であるとの高い評価をいただいています。

(3)の一品大量の販売で仕入先を引きつける、という点は「仕入」という概念を少し広げて「売り物件の確保」というふうに考えると仲介業も応用できる面がでてきます。

会員登録制、希望条件登録制を軌道に乗せることが売買仲介業の「成功の方程式」といわれていますが、これを実現し、運営に成功している例は極めて少ないようです。

当社も売買物件購入予定者を主体に会員登録に力を入れていますが、開業6年にしてようやく630余名に達したところです。地域内の世帯数の1パーセントを目標にして最大限の努力をしているのですが、目標数1,100人の50パーセントを超えたあたりから数は伸びません。世帯数の1パーセントという数字そのものに無理があるのか、努力・工夫が足りないのかは不明ですが、これからの研究課題の一つです。

ここで、当社の最高の「企業秘密」をオープンにします。それは、会員登録をしたお客さまからの成約は極端に少ないということです。売買希望条件を開示してもらい、条件に合致する物件情報メールや情報誌でマメにお送りしているのに成約に至るのは年間にして10件以下です。

この原因はよく分からないのですが、本気で探しているお客さまや急いでいるお客さまは、会員登録というプロセスを飛ばして、電話やメールで問い合わせをしたり、直接来店されることが多いという結果なのかもしれません。

しかし、この630余人の買い希望者のリスト、データベースは、売却物件を確保するという面で意外な効果を発揮します。売り希望のお客さまからの問い合わせ、申込みが確実に増えるという効果です。ウォルマートの経営理念である「仕入先を引きつける」ほどではありませんが、不動産仲介業の「仕入先」である売却物件を持つお客さまを引きつける効果はたしかにあるようです。

(4)の「質より安さを優先させる」という経営理念は、お客さまにとって生涯一度の高額な買い物である不動産購入の場合は、あてはまらないと断言できます。

仲介サービスの質よりも仲介手数料の安さを優先させるという仲介手数料のディスカウント商法は、苦しまぎれのその場限り商法と見るのは独断に過ぎるのでしょうか?

(5)の「同じ顧客が毎週来なければ、売上は維持できない」というのは、ネット店舗も全く同じです。

ネット店舗・ホームページを何度も訪れるお客さま、ネット店舗が最も大切にしなければならないリピーター客は新しい物件情報を見にくるわけです。せっかく見に来ても、新しい物件がなければ期待外れということになります。

物件情報やブログ・コラムの更新が、ホームページというネット店舗にとって、どれだけ大切かは、このことからも分かることです。

次に、不動産仲介業におけるホームページの導入、ネット店舗方式の採用は、小売業界における「セルフサービス」方式の採用と同じように業態を根本から変化させる「革命的な変革」ではないかということについての考察です。

今日では、スーパーでもコンビニでも日常的になったセルフサービス方式の歴史は、実はそれほど古いものではありません。1916年頃に米国の食料品のチェーン店が導入したのがセルフサービスの始まりとされています。

それ以前の食料品店舗では、顧客と商品棚の間には店員がいました。当時の食料品店では、顧客が買った商品を自分で持ち帰るのではなく、店員がお客さまに指定された商品を包んで配達員に渡し、今では考えられないことですが、お客さまの家まで配達するのが普通だっだそうです。

何やら、旧いタイプの不動産仲介業界、来店客に物件情報を提供して、求めに応じて現地案内する方式と共通点があると思えませんか?

ホームページ・ネット店舗は極力、セルフサービスの方式、考え方を採り入れてこそ成功するのではないでしょうか。インターネット経由でホームページを訪れたお客さまは、無償で好きなだけ物件情報という商品を買い物カゴに入れます。

つまり、ホームページ上で気になる物件を見つけたお客さまは、印刷操作ボタンをクリックしてプリントアウトするということです。プリントした物件情報という無料商品をじっくりと見較べ、自己の選択基準に合いそうな物件があれば、現地まで出かけて確かめます。

物件詳細情報に付随している案内図や物件詳細で地番まで明示することで、お客さま自身が現地を訪ねることができるようにすることは、「セルフサービス」という考え方からすれば至極当然のことです。

お客さまは、多くの物件を現地で実際に見て、物件の良し悪しや価格帯による物件の違い、相場が分かるようになります。この段階のお客さまに対しては、求められればアドバイスやサポートはもちろんすべきですが、あくまでも控え目というスタンスが肝心なのではないでしょうか。

お客さまが、特定の物件の購入を本気で検討しようという段階になってはじめて、お客さまはネット店舗の顧客からリアル店舗の顧客に変わるのです。

ネット店舗・ホームページの役割は、お客さまに物件情報という無料商品をセルフサービス方式で提供し続けることです。いつの日にかネット店舗のリピーター客がリアル店舗のお客さまになってもらうための必要不可欠な役割をネット店舗は担っていると見るのが正解なのです。



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