ネット不動産フロンティアノート



【第9章】ホームページの運営

9-(3) ホームページの3分類

不動産仲介業はインターネットとの相性が非常に良い業種ですが、仲介業者のホームページ保有率・活用率は、実は、それほど高くありません。

正確なデータではありませんが、2008年3月末の総務省の調査では、不動産業全体でのEC利用率、つまり、インターネットやホームページを利用した電子商取引の利用率は42%程度です。

地域や企業規模、経営者の意欲や将来見通しなどに左右されるわけですが、仲介業者のホームページ保有率は2010年現在で、40%台の半ばと推定できます。

ちなみに、宅建業の開業率は3.5%、廃業率は4.1%程度です。新規開業者はほぼホームページ活用業者ですから、あと数年でホームページ保有企業が50%を超えるでしょう。

仲介業者のホームページは「会社紹介型」と「物件反響型」「会員登録型」に分類できます。

今どき、会社紹介型のホームページなどは看板効果以外に「何の役にも立たない」わけですが、物件情報のマメな更新をせず、ブログやコラムも載っていないホームページは、結果として会社概要と事業紹介だけの「会社紹介型」のホームページと同じになってしまうわけです。

物件反響型のホームページは、掲載物件に対する資料請求や電話・メールでの問い合わせの獲得を主な目標にするもので、賃貸仲介業では特に効果を発揮します。又、売買仲介の場合、ポータルサイト経由での問い合わせに依存するホームページは、結果として物件反響型のホームページになっているケースが多いのが現状です。

会員登録型のホームページは、単発の反響・問い合わせだけでなく、メールアドレスの獲得・会員登録により、継続的にお客さまとのコンタクトを保つことを主な目的とする方式です。

目先の集客・追客だけでなく、地域密着で中・長期の目標を持つ売買中心の仲介業者にとっては、この方式以外には生き残ることは難しいのではないでしょうか。

ホームページの目的・目標は端的に言えば以下の4点です。

1.アクセス獲得(アクセス客のリピーター化)
2.信頼獲得(業者・業界に対する不信感の除去)
3.問い合わせ客の獲得(電話・メール・FAXでの問い合わせ、来店)
4.メールアドレスの獲得(会員登録・希望条件登録)

会社紹介型のホームページでは、1〜4いずれも達成できないことはたしかです。

賃貸仲介に特化したホームページの場合、物件情報の地域と種別を絞り込むノウハウを活用した「物件反響型」のホームページは効果を発揮します。

コンビニやスーパーは地域のお客さまの「買い物行動」をPOSシステムで分析・解明して品揃えを常に替えています。これと同じように、地域で賃貸物件を探しているお客さまの変化をリアルタイムで捉え、賃貸物件情報の絞り込みと物件毎の情報の質と量を飛躍的に向上させて、お客さまのコンバージョン(反響・問い合わせ・来店)を確保するという方式・ノウハウ・ホームページ運営システムです。賃貸仲介業のPOSシステム活用型コンビニ方式といったところでしょうか。

@dreamソフトの開発・参画者の一人でもあった中野忠社長が、東京・三鷹でドリーム・ワンというソフト開発会社を経営し、ドリームXという賃貸仲介業向けのソフトの普及に力を入れています。

三鷹駅の南口でアメリカン・ドリームという賃貸仲介に特化した実店舗も経営しているネット不動産の文字通りのフロンティアです。

賃貸仲介業の現場・実店舗からの発想・実践からスタートして、エンドユーザーであるお客さまに、真正面から向き合ってホームページの改善・改良に取り組んでいる強力な「開発チーム」も擁しているようです。

近く、ドリームXの「売買版」も発売を予定しているとのことですので、大いに期待しています。

不動産仲介業のICT(情報通信技術)化を進め、膨大なチラシ広告費を投入しなくとも仲介業の経営が成り立つような条件整備・経営基盤の確立のためには、廉価で使い勝手の良いソフトウェア・経営ノウハウがどうしても必要です。

不動産仲介業向けのソフトウェアは、多くの種類が出回っていますが、大部分はソフト開発専門の会社・チームが開発したものです。売買仲介にしろ、賃貸仲介にしろ、仲介業の現場からの必要性・発想に基づいたソフトウェアの開発が強く求められているのではないでしょうか。

ネット不動産の世界は、「集客セミナー」「「成功ノウハウ・セミナー」も盛んな業界です。それだけ「集客」が難しく、「成功ノウハウ」が少ないことの反映と見れば納得がいきます。これも、インターネットの利用が始まって10年程度の業界なわけですから、ある意味では当然ともいえます。

ネット不動産に取り組んでいる仲介業者の現状や問題点は以下のアンケートから見えてきます。ホームページ運営やネット戦略についての「悩み」や「問題点」についての回答は以下に要約できます。

○ ホームページの活用方法がよく分からない。
○ 反響を増やしたい。
○ メールでの反響が少ない。
○ メール追客・営業の方法に自信がない。
○ アクセスは増えても成約は増えない。
○ 集客が難しい。
○ 効果のあるSEO対策が分からない。
○ 社内に技術の解るスタッフがいない。
○ 導入費用が高すぎる。
○ ブログを続けられない。

ざっと拾い上げただけで、10項目の悩みと問題点が出てくるわけですから、課題が多いことは明らかです。

このフロンティアノートを書き進めている理由もこのあたりにあるわけです。もちろん、自分にとっての勉強、自社の不動産仲介部門の業績向上も大きな目標の一つですが、未知の分野、未開の荒野を切り拓く使命が私に課せられているのではないかと強く感じるからでもあります。

ここで改めて、ホームページの位置づけ、サイトの果たすべき役割について考えてみます。

それは、一言でいえば、ネット不動産にとっての営業マンとしての役割を果たすことです。営業マンには二つの役割があります。(1)商品・サービスのお客さまを見つけ出し、(2)商品・サービスを買ってもらうこと、です。

厳密にいえば、ホームページが果たすべき役割は、(1)の役割です。ホームページというバーチャル店舗の前を通りかかったお客さまが、おや?この店は面白そうだな、一寸のぞいてみるか……、と思ってもらえれば、第一歩としては成功です。

お客さまが店内に入ってきて、品揃えや店員の人柄や接客マナーについて見てもらえば、大きな第二歩を踏み出したことになります。ホームページ上ではこのフラッと入ってきたお客さまをアクセス客と見るのが正しいのです。

お客さまが店員に声をかけ、商品やサービスについての説明を求める行動に出る、それがホームページ上での問い合わせ客となるわけです。つまり、電話なりメールなりで、お客さまに声をかけていただく、サイトでいえば、「反響の取れるホームページ」になることが、ホームページ本来の目的なのです。

気の早いお客さまは、直接商品を手に取ってレジに向かうお客さまも、なかにはいます。ネット不動産の立場から見れば、ホームページで気に入った物件を見つけて来店するお客さまということでしょうか。

賃貸仲介業の場合、入学前、転勤前に入居先を決めなければならないというお客さまの側の急ぐ事情があるために、直接の来店や電話での問い合わせが多くなります。売買仲介の場合は、品揃えや店の雰囲気、会社の経営姿勢をじっくりと見ていただき、住宅という一生一度の高額商品の買い物をするには、この店に相談しながら決めようと思っていただけるか否かが最大の課題です。

ホームページを通しての、お客さまの安心感・親近感がこのレベルまで高まった時、お客さまは、ようやく電話やメールでの問い合わせ、会員登録・希望条件登録という行動を開始すると考えるのが正しいのではないでしょうか。

お客さまにとっては、問い合わせ、会員登録・希望条件登録というハードルは実はかなり高いものです。会員登録の必須項目を氏名とメールアドレスの最低限の用件に絞り込んでも、お客さまの側からすれば、かなり勇気のいる決断が求められているのです。

ましてや、住所・電話番号・年齢・職業・年収・購入予定額までの開示を求めるのは、業者側の「論理」・都合であって、お客さまにとっては、迷惑な、余計なおせっかいと映るのではないでしょうか。

インターネット・ホームページに力を入れている仲介業者のサイトを数多く見ていますが、お客さまの心の中、フトコロの中まで開示させるような会員登録の必須項目を設定しているのは、いかがなものかと強く感じます。

そもそも、会員登録の目的は、お客さまの希望条件に合致する物件情報を素早く、確実にお客さまにお届けすることにあるはずです。

住所や電話番号を入手して、「夜訪」や電話攻勢をかけるためではないはずです。だとするならば、氏名とメールアドレス、希望地域、価格帯、種別と広さ程度を記入してもらえば十分なのではないでしょうか。

お客さまの立場に立って、会員登録の必須項目を最低限に絞り込み、登録のハードルを低くすることは、間違った経営戦略なのでしょうか。

お客さまは、ネット時代の重要な個人情報であるメールアドレスと氏名を仲介業者に開示するわけです。氏名とアドレス公開には少なからぬリスクが伴うことは今や常識です。

この決して低くないハードルを乗り越えて、会員登録をしてもらうためには、(1)ホームページを通しての最低限の「安心感・親近感」の醸成に加えて、(2)会員登録のメリットが、氏名とメールアドレス開示のリスクを上回ることをお客さまに十分に理解していただくことがどうしても必要なことです。

会員登録のハードルを意識的に高くして、購入意欲の強い、緊急度の高いお客さまを選別しようという考え方にも一理あります。

しかし、その考え方に基づいたホームページの運営は、不動産マーケットが、物件過剰時代、買い主・借り主優位のマーケットに根本的に変わったことを忘れた、旧き良き時代の経営体質を引きずっていると言ってしまっては酷でしょうか。

会員登録(メールアドレスの獲得)までのステップを進めることができれば、ホームページは営業マンとしての第一段階役目を十分に果たしたことになります。

不動産仲介業に限らず、総ての業種・業態にいえることですが、マーケティング、つまりお客さまに選んでもらい、店の中まで入ってもらうことが、企業経営のスタートラインであり基盤です。

そのためには、お客さまに提供する商品やサービスのベネフィットを分かりやすく説明し、他社の商品やサービスとの違いの明確化、つまり差別化を図ることです。競争力の根源はこの点につきるわけです。

ホームページに営業マンとしての初歩的役割を果たさせること、つまりホームページマーケティングも、この意味では、他のマーケティングと全く同じです。

違いがあるとすれば、ホームページは24時間、365日、不平・不満を言わずに働き続けることです。

ここで、マーケティングとセールス、営業の関係について簡単におさらいをしておきましょう。

マーケティングとは、「お客さまを目の前に連れてくること」、つまりお客さまに商品なりサービスを選んでもらうことです。

セールスとは、目の前に来たお客さまに、商品やサービスを買ってもらうことです。

営業とは、この2つのことを同時並行的に実行する行為であり、これを担当する「営業マン」とは、実は、かなり高度な経験や技能が必要とされる「専門職」なのです。

ところが、インターネット・ホームページの普及と活用で、営業マンの役割に大きな変化が起きつつあります。

この変化を一言でいえば、押しつけ営業、プッシュ型営業が世の中から受け入れられなくなったということです。

それに代わって、インターネット・ホームページ活用による集客型営業、プル型営業が力をつけ、効果・結果を出せる時代になったのです。

この時代の変化を先取りし、時代を切り拓く役割を果たすことが、インターネット時代の企業の生き残りの条件だと言い切っても過言ではありません。

ホームページを活用した不動産仲介業のマーケティングは以下の5点に集約することができます。

(1)会社の経営理念・経営姿勢を高く掲げ、お客さまの共感・共鳴を得る。

つまり、会社の特長や強みを前面に押し出し、それをブログやコラムで、分かりやすく、具体的な言葉で表現し、発信すること。

(2)すべてを開示する姿勢をホームページ上で貫き、実行する。

情報の囲い込み、マイナス情報の不開示など、不透明感の漂う業界イメージを逆手にとって、実際の行動で業界の透明化を目ざすことを強く発信すること。

(3)物件情報の質・量・鮮度での差別化に加えて、資金計画作成や物件調査の精緻化などでの差別化を実現する。

ファイナンシャルプランナーとしての能力を備え、お客さまの住宅資金計画・返済計画などへの専門的アドバイス能力を具備すること。

加えて、中古住宅性能検査(ホームインスペクション)の専門技能を有するスタッフを養成し、これからの中古住宅流通の量的拡大の時代に備えること。

(4)不動産仲介業の特性を理解した、個有のSEO(検索エンジン対策)を実施する。

お客さまの変化、仲介業界の変化、検索エンジンの変化に対応した、日々の実践・ノウハウから生まれるSEOを実施すること。

社内にSEOを実施できるスタッフを養成すると同時に、iPadやiPhoneなどのモバイルの変化にも対応できる能力を向上すること。

(5)ホームページマーケティングは、未だ揺籃期にあることを認識し、試行錯誤を大胆に実行する。

自社のホームページに日常的に改良を加え、修正・追加・削除の経験からノウハウを生み出すこと。つまり、経営学の教科書が説く基本サイクル、 Plan→Do→Check→Action、PDCAを日常的に実施することです。

以上が、不動産仲介業のホームページマーケティングについて原則論、教科書的説明です。(3)、(4)はすぐには実現不可能な課題ですが、将来的には備えるべき能力であることはまちがいありません。

不動産仲介業者が、ホームページ上で出来ること、出来ないこと、ホームページが果たすべき役割については、まだまだ未解明な部分が多く残されています。

このフロンティアノートが未解明な部分を切り拓き、ネット仲介業の発展にいささかなりとも貢献できることを目ざして、これからも書き続けます。



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