ネット不動産フロンティアノート



ネット不動産の経営・・・ No.8-2

企業・経営体としてのネット不動産の適正規模・採算ラインについて分析・考察します。

不動産仲介業は、賃貸仲介、売買仲介いずれにせよ、企業の規模、売上高は千差万別です。

年商1億円以上の会社は1%強、年商1,000万円以下の会社が55%程度、13万余の事業者のうち84%弱が社員数4人以下です。

「街の不動産屋さん」と呼ばれる2人〜3人規模の生業的仲介業者から、500人〜1,000人規模で全国展開している大手仲介業者まで企業規模の格差は大きいものです。

しかし、大手といわれる仲介業者も、その支店・営業所レベルでみれば、地域密着型であり、人口50万人〜100万人の地域を営業エリアとして、チラシ広告やインターネット・ホームページで「物件獲得活動」や「集客活動」を行っているのが実態であり、営業所単位ではその規模は大きくありません。

大手といわれる仲介業者は、その知名度・「ブランド力」を生かして売り物件を獲得し、「物件情報の囲い込み」で、売り主・買い主双方から仲介手数料を得る、いわゆる「両手数料」狙いを基本戦略としています。

大手仲介業者の存立基盤が「両手数料」システムにあることが、民主党が選挙公約「INDEX2009」で「両手数料」の原則禁止を打ち出した時に明らかになりました。

住友不動産販売や東急リバブルの株価が20%近く急落したからです。

大手仲介業者を含む、旧い体質の仲介業者は陰に陽に「両手数料禁止」つぶしに奔走し、一時的に抑え込みに成功したかに見えます。

しかし、「両手数料」問題はわが国固有の仲介業界内部の「マグマ」であり、一時的に抑え込むと、かえって「大爆発」を起こしかねません。

現に、世界的に見れば不動産仲介業界の最大企業である「コールドウェル・バンカー」は、日本進出に際して、売り手と買い手は、価格だけでなく「情報開示」でも鋭く利害が対立するという「利益相反」の実情を考慮して、「双方代理」の禁止・「両手数料」の禁止を強く打ち出しています。

法律による「両手数料」の禁止が、大手仲介業者、売り主側業者の「情報の囲い込み」問題を解消し、旧い体質を残しているわが国の不動産仲介業界を根本から「変革」する起爆剤となるのではないでしょうか。不透明感の強く残る仲介業界の体質を変えるメガトン級の「破壊力」、ペニシリン、ストレプトマイシン並みの治療効果を発揮するのではないでしょうか。

このような業界事情、背景の中でネット不動産は誕生したわけです。

当初は、賃貸仲介業がインターネット活用で先行し、実績を残しています。地域を限定し、地域内の賃貸物件情報を大量にホームページに載せることで、お客さまのニーズを満たすことができたからです。

インターネットの廉価性、即時性、双方向性、情報の量と伝達範囲の「無限性」という特性を生かして、タウン誌の賃貸版や賃貸情報誌をほぼ駆逐しました。

賃貸仲介の関しては、ネット不動産は、その地位を不動のものにしたといっても良いでしょう。

ネットを活用した賃貸仲介業の場合、規模の利益、スケールメリットはあまりないようです。地域を限定した密度が濃く、鮮度の良い物件情報の提供がキメ手だからです。

もともと、不動産仲介業は労働集約型の典型であり、効率は悪く、生産性は高いものではありませんでした。ITとインターネットの活用により効率を良くする途は開けましたが、スケールメリットが出にくい業種であることには変わりがありません。

賃貸仲介と密接に関連し、隣接分野である賃貸管理は、スケールメリットと「累積効果」のある分野であり、賃貸経営の安定化のためには欠かせないメニューです。

しかし、インターネットを中心に賃貸仲介業を営んでいる業者の大部分が、他の分野からの転入組、新規開業組であるという実情からいって、管理物件をすぐに増やすことには無理があります。他社の管理物件を「扱わせてもらっている」という立場だからです。

しかし、ネット時代は、物件を探しているお客さまだけでなく、賃貸物件の大家・オーナーも確実に変化しています。

大家・オーナーは、自分の物件がホームページ上でどう扱われているかをチェックするだけでなく、物件周辺の家賃相場や需給関係まで厳しくチェックする時代になりました。

入居者の募集をまかされた管理会社が「情報の囲い込み」をして、他社のホームページに物件情報が載っていないことなどはすぐに見破られます。

インターネットとホームページを活用し、集客に成功している賃貸仲介業者の店舗を、大家・オーナー自らが訪ねて、仲介の依頼をする時代は、すぐそこまで来ていると言っても良いでしょう。

新規参入組が、手っ取り早く賃貸仲介から始められるという事情もあって、ネット賃貸仲介業は1人でもできますが、エリア内の適正規模はせいぜい3人〜5人といったところです。

時間と距離の制約があり、営業地域は限定されます。加えて、賃貸管理以外はスケールメリットのない業種ですから生業レベルからなかなか抜け出られないわけです。

売買仲介業の適正規模はどうでしょうか?

地域を限定し、地域内の物件情報の取得率を70%〜80%を目ざすネット不動産にとっての適正規模は、ホームページ運用に必要とする人員で決まります。

迅速な新規物件の入力、現地調査・写真撮影、マッチング、メール送信等々に必要な人員は、最低でも2人、商圏人口30万人、10万世帯で3人〜5人程度です。

売買仲介業そのものにも特にスケールメリットはありませんが、購入予定者の希望条件をデータベース化することの累積効果・ストック効果は大きなものがあります。

ネットとメールを活用する、ネット売買仲介業の最大のメリットは見込客情報の累積効果と、それを活用したデータベースマーケティング「見込客のストック経営」にあるといえます。加えて、「顧客満足」経営を貫くことで、契約・引き渡しまで完了したお客さまが、その後、その会社の「特別な顧客」として友人・知人などを紹介してくれる「営業マン」的役割が期待できるのです。お客さまの「顧客化」こそが仲介業のストック経営の真髄だといえるのではないでしょうか。

地域限定・地域密着型サービス業としての不動産仲介業は、スケールメリットとは無縁な業種だと断言できそうです。

不動産仲介業のフランチャイズ・チェーンやポータルサイトの運営会社のなかには、スケールメリットをさかんに宣伝する会社もあります。

しかし、スケールメリットがあるのはチェーン本部や運営会社であり、加盟店にはスケールメリットはありません。

期待できるのは、ブランド力とノウハウ取得、教育・研修の分野ぐらいです。会員相互の「顧客紹介」を前面に出している運営会社もありますが、検索エンジンでの上位表示を実現しているネット仲介業者には、相手側から紹介・仲介依頼が入ってくるのが実情です。

チラシ広告は集客効果が1万分の1、0.01%に低下している実情からみて完全に終わっています。

このような業界の実情を十分に知りうる立場にありながら、「ホームページの時代は終わった」、「売買仲介業の基本戦術はチラシ集客による見込客の累積経営とデータベースマーケティングにある」、「これからは、買い主専門の仲介業者(バイヤーズエージェント)の時代になる」と説いて回っている「不動産戦略家」もお元気なようです。

(株)ビス経営アカデミーの代表取締役会長、本村靖夫氏は新著「近未来型不動産売買仲介業の経営戦略」の中で、チラシ集客を戦略の基本にすえながら、チラシ広告で獲得した見込客に対して「メール配信」をすべきだと説き、これが「近未来型」の売買仲介業だと説いています。

チラシ広告で獲得した見込客から、どうやってメールアドレスを聞き出すのでしょうか?パソコンが苦手、メールアドレスがないからこそ、チラシを見て問い合わせをするのではないでしょうか。

本村靖夫氏は立派な方です。わが国の売買仲介業界でデータベースマーケティングの考え方を考案し、実践してきた第一人者です。

しかし、時代は変わったのです。お客さまも変わったのです。

当社は、本村氏の説く、「チラシ広告による見込客の獲得とデータベースマーケティング」を3年間「愚直」に実践してみました。同時に、ホームページ集客によるデータベースマーケティングも実行しました。

データベースマーケティング、つまり「物件情報」と「見込客」をデータベース化し、マッチングシステムを活用して効率的な売買仲介業を営むという考え方は、今でも全く正しい考え方であり、仲介業の「基本戦略」であることはそのとおりです。

しかし、集客手法、集客手段を「チラシ広告」中心とすることは完全な間違いです。

何が正しいのか、何が間違っているのかを議論するに際しては、「事実を並べて、道理を説く」という立場を貫かねばなりません。

時代が変わり、インターネットが普及し、お客さまも変わり、不動産仲介業の存立基盤も変わったのです。

チラシ広告の場合、1万分の1の問い合わせ率、反響率では、採算がとれないのです。チラシの掲載物件数を増やし、カラー印刷にしてみても、お客さまがインターネットで物件情報を探す時代なのです。

売買仲介の場合、チラシ広告の印刷・新聞折込代だけで1枚約5円かかります。1万枚のチラシ広告を新聞折込でお客さまの手許に届けるのに約5万円を要します。

50万円の広告費用をかけて10万世帯にチラシ広告を配布しても10人程度からの問い合わせがあるだけです。

10人の問い合わせがあっても、短時間で決まるのは1人か2人です。

50万円の費用をかけても、契約に至るのは2人だとすると、1人当たり25万円の広告費が先行して支出されることになります。

これに営業マンの人件費、事務所経費等を加算すれば、成約客1人当たり50万円程度の先行支出になるでしょう。

賃貸仲介と兼業しても、チラシ広告では採算が取れるわけがないのです。

両手数料狙いの営業展開をしたとしても、現実も前途も厳しいものになるでしょう。

「オトリ広告」で集客をしたり来店客をしつこく追いかけ回す営業手法は、このあたりに原因があると見るべきでしょう。



ページ上部へ戻る




フロンティアへフロンティアへフロンティアへフロンティアへフロンティアへ

 テーマ 一覧

・記事を追加した時にお知らせメールを希望する方はこちらへメールをお送りください。Takakanへメール
・ご意見・ご感想もお待ちしております。
・当ページの文章の引用・転載はご自由にどうぞ。

関連ページ