ネット不動産フロンティアノート



ネット不動産の経営・・・ No.8-1

風雪は人を磨き、不況は経営者を鍛えるという言葉が、実感を伴って迫ってくる今日、このごろです。

不況に加えて、今、大きな転換期です。転換期には、経営者は本気で考え、行動しなければならないとされています。経営者としての真価が問われているからです。

転換期の経営者の仕事は3つです。

1.今日の事業で成果を上げること。

2.潜在的な機会を開発すること。(変化するニーズを発見すること)

3.明日のために新しい事業を作ること

機会の開発や事業開発が軌道に乗り、利益を出すには、数年がかかります。既存事業が低迷し、どうにもならなくなってからの事業開発では遅すぎるのです。業績が低下し利益がなくなると、必要な投資や実験的な試行ができなくなるからです。

加えて、新しい事業やビジネスモデルの転換は、最初は、「年度利益」が出ないことが多いわけです。事業開発は、数年間の経費と収益を合算してみなければならないものです。つまり、利益の余力があるときに、事業開発をしなければならないということです。

これを不動産仲介業にあてはめて考えるとどうなるのでしょうか?

不動産仲介業は危機の真っただ中、歴史的な転換点に立っていることに異存はないでしょう。

危機とは、英語ではcrisis、ラテン語の原義では「決定、または結論に至る過程での転換点」を意味しています。

危機という言葉には、重大な結果に向かう分岐点という意味が込められているのです。つまり、本来の危機は、危険な局面という意味以上に、危険な局面になる前の分岐点こそが「危機」なのですよという意味がもともと含まれているのです。

不動産仲介業は旧い体質を引きずり、チラシ広告、物元主義、売り主・貸し主本位、両手数料指向で生き残ろうとするのか、ネット・メール活用、物件情報発信主義、買い主・借り主本位、業界と取引の透明化に勝ち残りの道を見い出すのかの分岐点に立たされています。

分岐点・危機に立たされ経営者の行動は3つのタイプに分かれます。

1つは、危機に目をふさぎ、現状肯定・現状維持の路線で何とか乗り切ろうとするタイプです。賃貸管理に一定の実績を持ち、売り主確保のルートとノウハウを有しているが、危機に立ち向かう勇気のない経営者も少なくありません。もしかすると、不動産仲介業が今、分岐点に立たされているという「現状認識」能力も欠けているのかもしれません。

2つ目は、危機・分岐点に立っているのは十分すぎるほど分かっているが、日常業務に忙殺され、危機への対応策を結果として「後回し」にしているタイプの経営者です。

インターネットとの関連でいえば、ホームページは開設したが、物件情報の入力、更新までは手が回らない。ましてや、レインズから新規物件情報を取得し、ホームページを物件情報満載のネット店舗化すること。ブログやコラムで会社情報を発信し、SEO対策まで行うことなど、人手からいっても、技術力からいっても「とても無理」と、半ばあきらめている経営者です。

このタイプの不動産仲介業者が大部分というのが現状ではないでしょうか。ネット不動産の「失敗事例」は巷に溢れています。不動産仲介業界全体が、大不況に見舞われているからです。

このような危機的状況、分岐点に立たされた仲介業者は、新・旧2つの道のいずれを選ぶべきか大いに迷っています。

チラシ広告も止められない。インターネット・ホームページも思うような成果が出ない。問い合わせや来店客も減少している。こんな時、前途のない道とは知りつつも、物件情報の囲い込みや「オトリ広告」、来店客への追い廻し営業といった旧い営業手法に依存してしまう「誘惑」は想像以上に強力なもののようです。

なにせ、会社の運命、社員の生活がかかっているのですから、「綺麗事」や建前論などは通用しません。

大手といわれる仲介業者も、実態は歩合給の比率が高いわけですから、営業マンは目の前のお客さまを追客し、何とかして成約に持ち込みたいというのが本音でしょう。

残念ながら、まだ多数派とはいえませんが、新しいタイプの仲介業者も各地で誕生しつつあります。

思い切ってチラシ広告は中止する。ホームページ集客に全力を注ぐ。質・量・鮮度、いずれも競争力のある物件情報を発信する。会社やスタッフの思いや姿勢をありのままに伝えるコラムやブログを発信し続ける。そして、「身内のつもりでお世話をします」という接客姿勢を貫く。

今の時点では苦しくとも、お客さまは見ています。どの会社が、口先だけでなく、本物の「顧客本位」の会社なのか。時間をかけて、じっくり見ているのです。

インターネットを使って、物件選びと会社選びに時間をかけるのが、ネット時代のお客さまの最大の変化、最大の特徴なのです。

いわば第3のタイプとして、インターネットに完全に特化し、地域あるいは客層を限定して、文字通り「ネット不動産のフロンティア」としての役割を果たす仲介業者が生まれようとしているのが2010年現在の実態でしょうか。

転換期の経営者に求められる機会開発と、それを基にした事業開発にチャレンジするネット不動産のフロンティア経営者群です。

機会開発とは、端的に言えば新商品開発です。開発した新商品を流通ルートに乗せ、販売方法を確立するのが事業開発です。

これを不動産仲介業に即して言えば、商品開発とは、ネット上、ホームページ上での「物件情報」の提供という商品開発を行うことです。ネット店舗・ホームページという新しい手法による「物件情報」の提供・発信そのものが機会開発・商品開発なのです。

この「物件情報」という新商品をインターネットを活用し、ホームページとメールで無料配送するのが、ネット不動産の流通部門の役割です。

ネット不動産の「販売部門」として収益を上げるのがリアル店舗です。バーチャル店舗・ネット店舗を経由して来店したお客さまに対し、誠実に対応し、現地案内・契約・引き渡しまでしっかりと応接・対応するのが役割です。

この販売部門を担当するリアル店舗の接客対応も従来型とは大きく変わりました。

多額の広告費を費やす旧いタイプの営業店は、どうしても強引な追客になりがちです。ましてや、フルコミッションの営業マンにとっては、店の信用や業界の信用などは、二の次、三の次です。目の前のお客さまに手練手管をつくして成約をせまるのは、彼らにとっては「当たり前」のことなのでしょう。

ネット不動産はこんな旧い業界体質を根本から変える力を持っているのではないでしょうか。

ネット時代は情報洪水の時代でもあります。つまり、情報そのものは、世の中にあふれていて、それだけではお金にならない時代なのです。

しかも、一人の人間が情報収集やネット利用に使える時間は限られています。この限られた時間の奪い合いの競争が、ネット時代の競争の本質ではないでしょうか。

ネット仲介業も例外ではありません。不動産を探しているお客さまの限られた時間の中で、どれだけ満足のいく情報を提供できるかという競争こそが、ネット不動産の競争の第一歩であり、企業としてのネット不動産のスタートラインに立ったということなのです。

今回の不況は、三菱UFJ証券のチーフエコノミスト水野和夫氏の説によれば、世界経済そのものが500年に1度の「歴史の峠越え」を迫られている規模と長さのものであり、各国レベルの「小手先の対応策」などはあてにしてはならないということになります。

「提灯持ち」レベルのエコノミストの期待論・願望論的見解・解説は別としても、景気循環論的には「コンドラチエフの長期波動」であり、70年周期の不況の現れとみるべきでしょう。

加えて、10年周期の設備投資循環である「ジュグラーの波」が重なったとみれば、歴代政権の経済政策、成長戦略がいずれも成果を生んでいないことも理解できます。

いたずらに、悲観論に陥ることは避けるべきですが、最悪の事態にも備えるということは、企業経営にあたる者として、常に心すべきことがらであることは言うまでもないことです。

悲観的見通しに触れたついでに、ネット不動産の弱点についても見ておきましょう。

ネット不動産は広報・広告手段をホームページとメールに絞り込むことが最大の特徴です。その裏返しとして、インターネットと無縁な層との接触する手法を持たないことが現時点での「弱点」といえます。

売り物件や賃貸物件のオーナーにはインターネットと無縁な年配者も少なくありません。現地看板の設置や情報誌の定期発行、売り物件の周辺地域へのチラシ広告のポスティング等で対応しつつ、時代の変化・進行を待つことが「現実的対応」ということでしょうか。

ネット不動産に踏み出した経営者の最大の悩みは、ホームページを能動的に、主体的に運営する人材の不足だと言われています。

ホームページに様々な工夫を凝らし、SEO対策を施して、検索エンジンの上位表示やアクセスアップを図るためには、かなりの技術を持った人材が必要なのです。

ホームページ運営の技術力を持った人材の不足が、ネット不動産の目下の最大の弱点といえそうです。

ホームページは、開設しただけで一定の効果があった時代はとっくの昔に終わっています。

今は、いかにしてホームページの差別化をはかり、自社の独自性、特徴を打ち出せるかの競争の時代になっています。

物件情報の質・量・鮮度での競争から、ブログやコラムでいかにして独自性・信頼性をアピールできるかの競争になっています。この部分での差別化・独自性のアピールは、実は、かなりの困難を伴うものであり、ネット不動産の最大の課題といえるのかもしれません。

ネット不動産に本格的に取り組む場合、対面営業・対人営業の部分、つまりリアル店舗に引き継ぐまでの部分をどのように展開すれば良いのかという問題を避けて通ることはできません。

賃貸仲介の場合は、電話での問い合わせが主流ですから、従来の手法で何とか対応可能です。

売買仲介では、メールでの問い合わせに対して、メールで対話をすることが主流です。

顔や姿の見えないお客さまとのメールでの対話というのは、新しい分野でもあり、かなり高度なノウハウが必要とされる部分です。

メールでの対話、「メール営業」は、お客さまにとっても「未踏の荒野」に一歩足を進めることですし、仲介業者側も「手探り」で一歩一歩進むしかない世界です。この分野で、今、フロンティアスピリッツが求められているわけです。

問題・課題はこれだけではありません。

個別企業だけでは解決できない問題として、わが国の不動産仲介業界は、大きな弱点、課題をかかえています。

第1は、成果報酬制度と深く結びついた、成約至上主義・売上至上主義という業界体質です。このことを主な原因として追客至上主義が生まれ、結果として業界不信を世の中に蔓延させているのではないでしょうか。

まず、お客さまとの信頼関係を築かなければ、次のステップに進めないというのは、この業界だけでなく個別企業の経営にとっても最大の弱点、問題点といえそうです。

次にネット不動産経営における勝者と敗者について考えてみます。

江戸末期・明治維新における典型的な敗者とされている「彰義隊」から学ぶべき「失敗の本質」とは何でしょうか?

それは、彼らが本質的に持っていた情報に対する鈍感さにあるといわれています。つまり、現地・現場・現実を確認し、現実から学ぶという姿勢を欠いていたことです。主義・主張・信念・利益・利権から出発して、現実に目を閉じ、間接情報のみで物事を判断し、行動したことが本質的な失敗の原因だったとされています。

幸い、21世紀の初頭に生きる仲介業者、とりわけネット不動産業者は、情報環境には恵まれています。

業界や自社の置かれた立場や問題点・課題も、ほぼ正確に認識することができます。

変化の激しい時代の勝者の条件、戦略的勝者の条件とは何でしょうか?

それは、
○ 世の中の変化の本質が分かること。
○ 世の中の変化の未来が見えること。
です。

つまり「世の中」、「変化」、「本質」、「未来」の4語がキーワードです。この内容・概念を、具体的に、深く深く理解し、実践することこそが勝者への道ではないでしょうか。

第8章「ネット不動産の経営」は以下のテーマを予定しています。

(1) 経営体としてのネット不動産(今回の分です)
(2) ネット不動産の適正規模・採算ライン
(3) ネット不動産の差別化・成功ノウハウ



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