ネット不動産フロンティアノート



不動産マーケットの特徴・・ No.6-6

ランチェスターの法則という戦略論があります。英国人ランチェスターが第一次大戦での空中戦を分析した結果をもとに生みだした法則です。

一言で言えば、「武器性能・戦闘員の技能が同じであれば、必ず兵力数の多い方が勝つ」という経験則を体系化したものです。

その後、第二次大戦中に、兵力や武器の補給などを考慮した「ランチェスター戦略」として確立され、日本では軍事戦略ではなく、販売戦略として再構築されてビジネス論、マーケティング論として有名です。

弱者の立場と強者の立場で、その戦略・戦術は異なるわけですが、弱者は、地形・時期・地域、つまり戦場を主導的に選択することで敵を上回る兵力を集中し、数的優位を最大限に活用することでまず局部的勝利、地域的勝利を獲得するという戦略論です。

商品と地域を限定し、その地域に兵力・戦力を集中し、その地域での強者・勝者、第1位を目ざすという考え方は、不動産仲介業にとっては大いに学ぶべき経営戦略です。ランチェスター戦略は不動産仲介業とは相性のいい経営戦略論だといえます。

しかし、わが国に紹介され、論じられているランチェスター経営戦略論は、そのほとんどが、インターネットのこれだけ普及を想定していない時代のものであり、いわば「航空戦・空中戦」を前提にして論じられているという限界があります。

ならば、ネット時代のランチェスター経営戦略は、どこがどう違うのでしょうか。最大かつ決定的な違いは、戦いの分野、戦線は「情報戦」であり、最大の武器がインターネット・検索エンジンだということです。「航空戦・空中戦」の時代ではないのです。

ランチェスター戦略では、自社が強者と弱者のどちらに属しているかで戦略・戦術が変わると説きます。ネットビジネス、ホームページを活用してのビジネスでは、一般論としては、ほとんどのホームページが強者になれないと説いています。

主要な商品やビジネスの分野には圧倒的に強い「先行者」がいるからです。

ならば、強者でない者、後発組はどうすれば良いのでしょうか。ランチェスターは、自分の強い地域、強い商品、強い分野を見いだし、そこに「兵力」を 集中することを強調しています。

有利な戦場・有利な局面を見つけ出して、そこで強者となる、断トツの1位になることを目ざせと説いています。

不動産仲介業、ネット不動産のケースで考えてみましょう。

インターネットと不動産仲介業は、非常に相性が良いことはよく知られてきました。仲介業は商品・サービス・地域を絞った、ローカル産業だからです。

このローカル産業としての不動産仲介業者が、ホームページという、自社専用の「放送局」を手にしたのです。

365日、24時間、物件情報を放送し続けることが可能になってのです。物件情報だけでなく、自社の長所や他社との違い、業界事情なども併せて放送・発信することができるのです。

問題は、お客さまが、自社の放送局・ホームページにダイヤル・チャンネルを合わせて、選んでもらえるか否かです。

賃貸にしろ、売買にしろ、不動産を探しているお客さまの8割以上はインターネット・検索エンジンを利用します。

この検索エンジン表示で1位になる、地域名・駅名・不動産というビッグキーワードで上位表示されることこそが、ランチェスター戦略の第一歩を踏み出したことになるのです。

なぜならば、インターネットを全面活用する不動産仲介業者、ネット不動産の競争は、見込客獲得の「情報戦」だからです。

この戦場で勝つ、市場占拠率で2位以下を√3(1.75…)倍以上引き離すことがマーケットでの強者になる第一の条件であると、ランチェスター戦略は説きます。

検索エンジンの1位と2位のアクセス数の差は3.5倍です。奇しくも、ランチェスター戦略が説く√3(1.75…)の2倍の差となっています。

ホームページネット店舗にとって、アクセ数の差は、店舗が人通りの多い繁華街にあるのか、人の通らない裏通りにあるかぐらいの違いがあります。

質屋のようになじみの深い顧客の通う店は、裏通りでも成り立つでしょうが、情報産業の典型である不動産仲介業は、ネットを通して、お客さまに来店してもらう、ホームページにアクセスしてもらうことが、絶対的必要条件であり、それは検索エンジンの上位表示以外はないのです。

ビッグキーワードでの上位表示が難しい(弱者の立場)場合は、お客さまの「検索行動」分析からニッチキーワードを見つけ出し、ニッチキーワードでの上位表示を実現することです。有利な戦場・有利な局面を見いだして、そこに兵力・戦力を投入することが、ネット時代の経営戦略の基本であるとランチェスターは教えています。

ランチェスターが説く、2位に√3(1.74)倍以上の差をつけよという「法則」は、実は、広い戦場での戦い、広域戦線での戦い方についての「法則」、強者の法則です。

限定された戦場、限定された地域で必ず勝つ戦法として、ランチェスターは相手側の3倍の兵力を投入せよ!と説いています。

検索エンジンの1位と2位のアクセス数の差は3.5倍程度です。アクセス数だけがすべてを決めるわけではありませんが、見込客獲得競争という戦争の緒戦を、アクセス数獲得戦と位置づけるならば、検索エンジン表示の1位確保の戦略的重要性が理解できるのではないでしょうか。

ランチェスター戦略論は、各論として、一点集中主義、接近戦、一騎討ちの法則を説いています。以下にランチェスターの説く不動産仲介業に即して考えてみます。

一点集中主義

地域を限定し、扱うサービスを絞り込むことで、地域内の占拠率を高めることを目標とします。賃貸仲介にしろ、売買仲介にしろ、地域内の物件情報の70%は確保したいところです。

売買の場合、見込客の占拠率も25%程度は確保したい目標です。見込客の占拠率はエリア内の世帯数×1%=不動産購入見込客数と仮定して算出します。東京の城南地区を商圏としてネット不動産の先駆者であるR社の場合、エリア内の世帯数134万世帯の1%の見込客(13,400人)に対して、約3,600人の見込客を確保しており、占拠率は26.9%です。(2010年3月1日更新のR社のホームページより)

ちなみに、当社の場合は、福島市内の世帯数115,000世帯×1%=1,150世帯に対して約600人の見込客ですから、見込客占拠率は52%ということです。

接近戦は不動産仲介業ではどう考えればよいのでしょうか。

それは、リアル店舗での応接・接客そのものではないでしょうか。ホームページ、メール接客を通して一定の信頼関係ができたお客さまが、安心かつ安全・有利に、契約・引渡しまで進むことをサポートする仕事そのものを接近戦ととらえる考え方です。

ネット不動産の接客サービスに手練・手管は不要です。必要なことはただ一つ、「身内のつもりでお世話をします」という姿勢に徹することだけです。

ランチェスター戦略が教える「一騎討ち」の法則を不動産仲介業に適用するのはどんな場面でしょうか。

まず最初に悩むのは、誰と一騎討ちするのでしょうか、お客さまでないことだけは確かです。同業者でしょうか。何か違うように思えます。

不動産仲介業の競争「戦争」はお客さまをいかに多く獲得するかという競争であり、競争相手・敵を倒すことでもないし、ましてや、殲滅することでもありません。

地域内の不動産仲介業者は、お互いに、一面競争、一面協調という相互依存関係にあるわけです。このように考えるとランチェスター戦略の一騎討ちの法則は不動産仲介業には当てはめられないようにも思えますが、強いて言えば、売り物件の獲得戦や賃貸物件獲得戦での「本気で対応する」というぐらいの意味でしょうか。

「陽動作戦」を展開するというのもランチェスターの弱者の戦略の一つとされています。

陽動作戦とは、「こちらの動きを悟られないようにオトリ的な動きや、相手の心理的な動揺を誘う作戦を行う」ことですが、孫子の兵法にもある戦術論です。

この考え方を不動産仲介業に適用している旧い体質の業者も少なくありません。「オトリ広告」でお客さまを来店させ、自社都合に合わせた物件にお客さまを誘導する手法もその一つです。幻の競争相手を作り出して、お客さまの「決断」を迫る「煽り商法」などはこの作戦の応用なのかもしれません。

この作戦・戦術を使う業者は、決定的な間違いを犯しています。

なぜならば、敵・競争相手を間違えているからです。目の前のお客さまを「陽動作戦」での敵・相手とみなし、オトリやアオリ行為の対象としているからです。

不動産仲介業の競争・戦争は「お客さま獲得」競争なのです。

お客さまを騙す作戦に未来があるはずがありません。せいぜい、目先の利益を追いかけ回すだけであり、地域での勝者にはなれません。

ましてや、今は、インターネットの時代・情報戦の時代です。お客さまは「情報戦」では業者を上回る高性能の武器を手にし、本気で準備をしているのです。

ネット時代のランチェスター法則について改めて考えてみました。

第一次大戦では、戦車・潜水艦・化学兵器・航空機と、当時の最先端の技術を利用した兵器が次々と登場しました。

航空機は、4番目の兵器として登場したものであり、当時としては勝敗の帰趨を決めるとされた最先端の兵器でした。

ランチェスター博士は、その航空戦の勝敗、損害率の分析・研究の中で「法則」を見いだしたとされています。

ランチェスターの法則は、第二次大戦に際して米英当局の戦略立案計画、オペレーションズ・リサーチ(OR)の一環として採用され、大戦の勝利に大きく貢献したことで評価と高めたとされています。

敗戦国、日本にORの基本的考え方としてランチェスターの法則が紹介され、経営戦略の法則として普及したものです。

「弱者が強者に勝つ」戦略は、弱者(?)である中小企業の経営者向けのセミナーのテーマとしては最適だったのでしょう。

もし、ランチェスター博士が現在の世の中に生きていたらとしたら、まちがいなく、IT、インターネットこそが経営戦略の最先端の兵器であると見抜き、その効用・応用の「法則化」に取りくんだのではないでしょうか。

そして博士は、不動産仲介業者にとってのランチェスターの法則とは、地域特化・顧客密着そのものであり、インターネット・検索エンジンの最大活用こそが、弱者としての戦い方を超えて、強者への道だと説くのではないでしょうか。

さらに、つけ加えるならば、ビッグキーワードで検索エンジンの1位表示は、弱者の立場ではなく、強者の立場にその立場を根本から変える「戦略的な拠点」を占拠することであると説くのではないでしょうか。



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