ネット不動産フロンティアノート



仲介業・マーケット・日米の違いから学ぶ・・ No.5-1

わが国の不動産マーケットを分析し、その特徴を浮き彫りにするに際して、外国のマーケットと比較・検討する中で見えてくるものがあるのではないでしょうか。

ここでは、人口、経済規模が約2.5倍で、政治、経済、文化の面で身近な存在である米国の不動産マーケットとの比較という手法で、日本不動産マーケットの分析を試みます。

検討するテーマは以下の項目です。
(1)不動産取引制度の違い
(2)社会的背景の違い
(3)中古住宅マーケットの違いと背景


(1)不動産取引制度の違い

不動産の売買や取引の仲介を業として行う場合、日米ともに免許を取得しなければならない、という点は同じです。

米国は合衆国であり、州によって不動産取引を規制する法律に違いがあります。わが国となじみが深く、不動産取引制度の先進州の一つであるカリフォルニア州の制度を基に比較を試みます。

日本の場合、知事又は大臣による宅建業免許が必要であり、従事者5人に対し1人以上の宅建主任者の配置が義務づけられています。逆からみれば、わが国では5人に4人までは何ら資格も免許もない従業員が不動産に関わる仕事ができるということです。

米国では、ブローカー免許(Broker License)、セールスパーソン免許(Salesperson License)、法人免許(Real Estate Corporation License)と分かれており、州当局から免許が交付されます。いずれかの免許がなければ不動産の仕事に従事することができない、取引に関わる電話に出ることも禁止されているほどだと言われています。

日本の宅建業免許に相当するのが米国のブローカー免許であり、専門的知識を有すると認められた個人に与えられる免許です。資格要件としては、

・18歳以上
・法定試験の合格者
・2年以上のセールスパーソンとしての実務経験
・専門学校での不動産鑑定・不動産登記・会計学等の不動産に関する専門講座の単位取得

が求められます。

ちなみに、わが国の場合、宅建業免許の役員要件も宅建主任者の個人要件も、禁治産者でないこと、禁固5年以上の刑を云いわたされたことがないこと等の消極的要件が主です。

わが国の宅建主任者の場合、不動産に関する広範囲な法律知識と土地や建物についての専門性の高い知識が要求される資格試験に合格することが必要条件です。日本の宅建主任者は米国のブローカー免許に優るとも劣らない資質・知識が求められているといえます。

しかし、宅建主任者は従業員5人に1人以上を配置すれば良いとされ、セールスパーソン免許以上のライセンスを持たなければ不動産業に従事できない米国の制度との違いは大きいものがあります。

次に、セールスパーソン免許ですが、これはブローカーを補佐する不動産業従事者に求められる免許で、ブローカーの監督の下でのみ仕事ができる制度です。

免許取得の要件は、ブローカー免許取得で求められる内容より多少緩やかに設定されているようで、実務経験は不要です。

米国にも不動産業の法人免許制度があります。日本の宅建業免許の法人版と考えればよく、最低1名以上のブローカー免許取得者の設置が義務づけられています。当然のことですが、所属するブローカーやセールスパーソンの行為は、すべて法人の行為とみなされ、法人が責任を負わされます。

不動産取引をめぐる制度で、日米の最大の違いはエスクロー制度という中立の第三者機関が米国には存在し、取引の安全を担保する制度があることです。中古住宅の取引の場合は、通常この制度が利用されます。

契約締結から代金決済・引き渡しまで一定の期日を要するのは日米共に同じですが、この期間に何をするかという内容の面で日本と米国では大きな違いがあります。

日本では契約から残金決済・引き渡しまで一定の期間を設けるのは、資金借入の結果が出るまでに一定の時間が必要だということが大きな理由です。

米国の場合は、契約締結後、売り主は「権利証」などの関係書類を第三者機関であるエスクロー会社に寄託し、買い主はエスクロー会社に頭金を含む代金を支払います。

買い主は、残金支払い・引き渡しまでの間に、建物検査(ホームインスペクション)を自らの費用と責任で行うわけです。

エスクロー制度の目的・概要は以下の通りです。

○関係書類を第三者の立場でチェックし、取引の安全を保障すること。
○契約後に、売り主が行う白アリ検査・駆除作業の確認。配管漏水、雨漏り等の検査と修理完了証明書のチェックによる「住宅品質」の保障。
○第三者機関の関与により、売り主・買い主の公平・対等な立場での取引の保障。
○登記に必要な費用(弁護士費用等)もエスクロー費用に含まれます。
○エスクロー会社の許可基準は厳しく、銀行、法律事務所、信託会社、大手不動産会社が兼業しているケースが多い。

わが国の場合、契約から代金決済・引き渡しまでの一連の流れを不動産仲介業者が仕切り、残金支払いと登記手続きに必要な書類の引き渡しの同時履行(司法書士によるチェックと代行)という型で取引の安全が担保されるシステムです。

米国の場合、不動産取引には、エスクロー会社の他にも、建物検査会社(Inspection Company)、登記保険会社(Title Company)と多くの関係者が関与します。費用もそれだけ余分にかかることになります。

カリフォルニア州で6,500万円の戸建住宅を購入した場合、買い主が負担する諸費用は164万円程度、売り主が負担する費用は672万円程度です。米国では、買い主側は仲介手数料を負担せず、売り主側が6%の仲介手数料を支払うのが一般的です。

買い主側の仲介業者は、売り主側の仲介業者が(売り主から)受け取った6%の仲介料のうち3%分を受け取るという慣習が定着しています。

米国でも、90年代までは売り主側の仲介業者が、両手数料狙いの情報囲い込みが少なくなかったと言われています。

公平・公正な取引を求める消費者団体の運動やMLS(Multiple Listing Service)の普及による物件情報の全面公開、法律による「両手数料取引」の原則禁止により、仲介業者が売り手側(Seller's Agent)と買い手側(Buyer's Agent)に明確に区分されるようになったという背景・歴史があるようです。

いずれにせよ、わが国の場合、仲介業者だけが間に入る型での取引が一般的であり、米国のエスクロー制度のような、中立的な第三者機関が関与するシステムにはなっていません。

それだけ不動産仲介業者や宅建主任者の責務は重く、社会的責任も大きいわけですが、必ずしもその期待に応えているとは言い切れないのが実情ではないでしょうか。



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